赤ちゃんの頭の形と側弯症のこと ― 育休明けに考えたこと |在宅・施設・自費リハ・土日祝日OK・都内
こんにちは!SMARTの井上です。
先日まで育児休暇をいただいておりました。長く現場を離れることになりましたが、その間、私の業務を引き受けてくださったスタッフの皆さん、そして担当の交代を快く受け入れてくださったお客様には、本当に助けていただきました。おかげさまで、家族と過ごすかけがえのない時間をいただくことができました。この場を借りて、あらためてお礼を申し上げます。
我が子を毎日抱いていて、頭の向きに癖があることに気づきました。
放っておくと、いつも同じ方向を向いている。しばらくすると、その側の後頭部が少し平らになってきます。理学療法士として知識では知っていたことですが、24時間そばで見ていると、頭の形は結果であるにすぎないのではと感じました。

向き癖が先か、頭の形が先か
赤ちゃんの頭蓋骨はやわらかく、同じ場所に圧がかかり続けると平らになります。これが位置的斜頭と呼ばれるものです。原因としてよく挙がるのが向き癖で、その背景には首の回旋のしにくさ、たとえば胸鎖乳突筋の緊張差があります。
厄介なのは、この関係性が一方向ではないことです。首が回りにくいから同じ方向を向く。同じ方向を向くから後頭部が平らになる。平らになった面は座りがよく安定するので、赤ちゃんはさらにその向きを好むようになる。こうして循環ができあがります。実際、斜頭のある赤ちゃんでは、斜頸と診断されていなくても首の回旋制限がみられることが多いと報告されています。
首の非対称は、首だけで終わらない
首が一方向に傾いたまま時間が過ぎると、体幹はそれを補うように反対側へ傾きます。乳児期には、斜頸、斜頭、体幹のカーブ、股関節の非対称が同じ側にそろって現れることがあり、胎児期の姿勢に由来する一連の変形として古くから知られています。
ここで大事なのは、頭の形にゆがみがある子が将来必ず側弯症になる、と単純に言えるわけではない点です。多くの位置的斜頭は成長とともに目立たなくなりますし、思春期に見つかる特発性側弯症の原因が乳児期の向き癖だという証拠もありません。ただ、首から上の非対称と体幹の非対称は、別々の問題ではなく、同じ姿勢の癖の別の現れ方として見たほうが臨床では説明がつくことが多い、というのが私の実感です。
スタジオで側弯症の方をみていて思うこと
八丁堀のスタジオでも、側弯症の方への運動指導を行っています。カーブの形はさまざまですが、頸椎から胸椎上部の傾きが目立つ方では、頭部の形に左右差が残っていたり、日常のふとした場面で首が決まった方向を向きやすかったりすることがあります。うかがってみると、昔の写真ではいつも同じ側に首をかしげている、と話される方もいます。
もちろんこれは臨床での印象であって、因果関係を示すものではありません。それでも、体幹だけを見て運動を組み立てるより、頭と首の位置まで含めて姿勢をとらえたほうが変化が出やすい。側弯症へのアプローチで頭部の位置や視線の使い方を扱うのは、そのためです。
家庭でできること
赤ちゃんの向き癖に対しては、特別なことよりも日々の環境づくりが効きます。
寝かせる向きを毎回同じにしない。ベッドの位置や声をかける側を入れ替えて、反対を向く理由をつくる。抱っこの向きを左右で交代する。起きている時間に、見守りながらうつ伏せの時間をつくる。長時間同じ姿勢で固定される用具の使用は短めにするなどが対処法です。

一方で、首がどうしても一方向にしか回らない、頭の変形がはっきりしてきた、左右差が強まっているという場合は、早めに小児科や整形外科に相談してください。頭蓋がやわらかいこの時期は、対応が早いほど変わりやすい時期でもあります。
同じことは高齢期にも起きる
床面の影響を受けるのは赤ちゃんだけではありません。臥床時間が長くなった高齢の方にも、よく似たことが起きます。
ベッドで過ごす時間が増えると、枕の高さやマットレスの沈み込み、テレビや窓、ドアの位置といった環境によって、頭が向きやすい方向が決まってきます。首が一方に傾いたまま長く過ごせば、体幹はそれを補うように傾き、やがて関節や軟部組織が硬くなっていきます。赤ちゃんと違って頭蓋骨が変形することはありませんが、代わりに拘縮という形で姿勢の非対称が残ります。
訪問リハビリの現場でポジショニングを扱うのは、褥瘡の予防だけが目的ではありません。体をどの面で支えるか、どちらを向いて過ごす時間が長いか。その積み重ねが、そのまま姿勢のかたちになっていきます。
そして何より効果があるのは、床面に接している時間そのものを短くすること、つまり離床です。座る、立つ、少し歩く。赤ちゃんのうつ伏せの時間と同じで、姿勢が固まる前に体の向きが変わる機会をつくることが、一番の予防になります。
人生の最初と最後で、体が床から受ける影響の出方は驚くほど似ています。
おわりに
育休中に自分の子どもの首と頭を毎日眺めていた時間は、結果として非常に濃い臨床の勉強になりました。姿勢の癖は、大人になってから急に生まれるものではありません。乳児期の向き癖から高齢期の姿勢まで、ひと続きのものとして見ていく視点を、これからの現場でも持ち続けたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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